
2014年頃に話題となった抱っこ紐転落事故を受けて、
2015年に抱っこ紐の安全基準(SG基準)が見直されました。
そしてその基準に対応すべく
メーカーも努力しています。
安全への意識が高まることで、
もしもの事故が減るのはすばらしいことですよね。
ですが、抱っこ紐の本質を考えると
SG基準にはメリットばかりがあるわけではないかもしれません。
SG基準の改定で抱っこ紐の安全基準が厳しくなる
あなたもこのマーク、どこかで見覚えありませんか?
これはSGマークといいます。
SGとはSafe Goods (安全な製品)の略。
SGマークは、「消費生活用製品安全法」に基づき
通商産業省(現・経済産業省)の特別許可法人として
設立された製品安全協会が、
安全を保証するマークとして生み出したものです。
引用:https://www.butterfly.co.jp/products/table_equipment/sg_mark.html
SGマークはSG基準という国内独自の安全基準に
適合した商品のみに表示する事ができるマークです。
乳幼児用品の他にも、
福祉用品やスポーツ用品など
100品目を超えるあらゆるジャンルの商品に
基準が定められています。
SGマークの表示は任意であり
必ずしも基準に適合していないといけない
というものではありません。
ですが、逆を言えばSGマークがつくことで
安全へのお墨付きをもらったという証明にもなります。
そして抱っこ紐の話になりますが、
2014年頃の赤ちゃんの落下事故を受けて
2015年に抱っこ紐のSG基準が見直されました。
中でも、落下防止の安全対策の項目が厳格化されています。
内容は以下の通り、
- 抱っこ紐に足通しや、腕通し、ベルト等、
乳児が落下しない構造を有していること。 - その安全性の検証は抱っこ紐をゆるめて装着し
ダミー人形を入れて以下の体勢をとって確認する。
①左右に傾く
②左右にねじる
③前に屈む(約90°)
④後ろに反る
⑤軽く飛び跳ねる
⑥両手の上げ下ろし
⑦前に屈み片手を下げる。
※詳しくは【資料】抱っこ紐のSG基準(外部リンク)をご覧ください。
つまり、抱っこ紐がゆるくても落ちないような
構造を施していることが条件ということです。
SG基準を満たしていないと危険?!
SGマーク取得は任意ですから
全ての抱っこ紐にSGマークが付いているわけではありません。
特に海外製品などは
SG基準を満たしていない商品が多数あります。
人気商品でもです。
ではSG基準を満たしていない商品は
危険なのでしょうか?
実はSG基準以外にも安全基準は存在します。
海外の安全基準
まずはEN基準というもの。
これはヨーロッパ(EU)で適用される
任意の安全基準です。
製品の安全構造上の細かな基準の他に、
製品の強度や耐久性も重視しています。
そしてASTM基準。
これはアメリカの安全基準です。
アメリカではこの基準にクリアしていない商品は
販売できない強制規格です。
商品の強度はもちろん、
商品の取扱説明書の内容や注意表示の的確性など、
消費者が安全に使える配慮がなされているかを
重視する基準となっています。
日本で人気の海外メーカー製抱っこ紐は
大抵これらの厳しい基準をクリアしていますから、
SGマークがない=危険な抱っこ紐というわけではありません。
エルゴはSG基準に対応
落下事故以前から国内メーカーの抱っこ紐は
赤ちゃんの落下防止ホールドベルト
(赤ちゃんを抱っこ紐の中で固定するベルト)を
早くから採用し安全対策を行ってきました。
その反面、海外メーカーにおいては
ベビー用のベルトを付けているような抱っこ紐は少数派でした。
というのも、先程お話したように
海外メーカーの抱っこ紐は欧米の安全基準をクリアしていたため、
それ以上の安全対策の必要が無かったからです。
しかし赤ちゃんの落下事故報道で
事態は変わりました。
日本で一番売れているエルゴベビーが
SG基準に対応するためにベビーの安全ベルトを取り付けたのです。
おそらく落下事故の風当たりが
最も強かったのはエルゴでしょうし、
使用者1位の抱っこ紐だからこそ
割合的に落下のリスクが一番大きいため
SGマークを取得は必須だったのでしょう。
海外メーカーの抱っこ紐は
全てにホールドベルト等の落下対策が
あるわけではありません。
しかしエルゴが対策を行ったことで
今後ホールドベルトをつける傾向が
強まる可能性も考えられます。
日本限定SG基準が正しい抱っこを遠ざける?
製品の安全性の向上という意味で
SG基準の強化にはメリットがあったと思います。
しかし、個人的な意見としては
日本独自のSG基準にはデメリットもあると思うんです。
落下防止装置のデメリット①赤ちゃんとママを遮る装置
安全ベルトにしても、安全パットにしても、
落下防止対策装置はお母さんと赤ちゃんの間に
一つの障害物を増やすことになります。
すると赤ちゃんとお母さんの衣服に加えて
安全装置が親子の間に入るわけです。
このブログでは
ベビーウェアリング(母子密着)ができる抱っこが
理想であるとお話していますが、
この点からすると安全装置が
障害になってしまいます。
もちろん障害といっても微々たるものですが、
たとえ薄い安全装置でも
赤ちゃんが感じるお母さんの体のぬくもりは
安全装置の有無で
大きく変わるのではないでしょうか。
落下防止装置のデメリット②間違った抱っこを容認する
SG基準の安全性の検証方法は、
抱っこ紐をゆるめた状態で屈んだり
ジャンプしたり、体を捻ったりして
落下の有無を検証するというものです。
これは当然ながら、
落下事故が起きた時の状況を
再現したものです。
以前の記事で書いたように
私は落下事故のほとんどの原因が
装着者の不注意であると考えています。
つまり、SG基準の安全検証方法は、
「こりゃないよ」というような間違った使い方でも
安全に使用できるかどうかをチェックしている
ということ。
間違いに対して安全対策する
必要があるのでしょうか?
不注意を容認することに
つながらないでしょうか?
たとえばAという人間がいるとします。
その人が誤って手持ち花火を10本まとめて使用して大ヤケドしたとします。
この事故を受けて国は
”手持ち花火1本の火薬量を10分の一に減らし5秒で鎮火する”
という安全基準を定めました。
これをどう思いますか?
「Aの不注意のために
花火がつまらなくなったらたまったもんじゃない」
と思いませんか?
気が利きすぎる安全対策は、
時に商品そのものの役割や魅力さえ
消してしまう恐れがあります。
抱っこ紐も同じです。
いくらユルユルでも安全に使えてしまったら、
使用者はその間違った使用方法を
改めることはないでしょう。
そしてお母さんたちの
抱っこひもに対する注意意識は
確実に低下していきます。
するとこれまでに無かったような
新たなトラブルが発生する
原因になるかもしれません。
(先程の花火の例だって
しょぼい花火を100本まとめて着火する連中が
必ず現れるでしょう。)
さらに、誤った使用により
抱っこひもの快適性は失われ、
母体への負担が増すでしょう。
同時に赤ちゃんの姿勢への影響や
不安感も増すことになり、
赤ちゃんが抱っこ嫌いになってしまう可能性もあります。
抱っこ紐を安全に使うことはとっても大切です。
しかし正しく使えば起きないような
事故のために過剰に安全対策を行うことにも
不安を感じます。
安全対策があろうがなかろうが
最も気をつけるべきは母親自身なのですから。
エルゴの安全ベルトは日本だけ
SG基準にはEN基準とASTM基準にはない
独自の基準が定められています。
それは赤ちゃんの落下、
とりわけ抱っこ紐上部からの落下
についての安全対策です。
海外にはこの基準がないため
ベビーベルト等の義務もありません。
アメリカ生まれのエルゴベビーの
ベビーベルトも実は日本限定の仕様なんです。
海外のエルゴにはベビーベルトはなく、
オフィシャルショップでも付属品としても
取扱がありません。
つまりエルゴ本国では
ベビーベルトは存在しないことになっています。
某海外メーカーの方が言っていましたが、
実は特定の国だけに仕様を変えるというのは
かなり大変なことで、
仕様を変えるなら全世界分を一斉に変えたほうが
断然ラクなのだそうです。
(それなのにSG規格に適合させた
エルゴの輸入元さんはスゴイと思う)。
それでもエルゴは日本以外にベビーベルトを付けない。
理由はきっと、
ベビーベルトを付けるメリットよりも付けないメリットが大きいから
でしょう。
あれもこれもと安全対策をして
結果的に抱っこ紐が最大のメリットを発揮できなくなったら
本末転倒だと考えているのではないでしょうか。
SGマークが全てではない
サービス大国日本では
至れり尽くせりの商品が好まれる(信頼される)
傾向が強いです。
例えば携帯電話(スマホ)のガラパゴス化も
その一環ですよね。
(結局はシンプルなiPhoneが
最もシェアを伸ばしているワケですが。)
安全ベルトのデメリットを書きましたが、
抱っこ紐を至れりつくせりにしたい開発者さんの気持ちも
よく分かります。
赤ちゃんを守りたいというのは
世界共通の感覚ですからね。
もし私が抱っこ紐初心者なら、
落下防止対策の有無が購入ポイントになっていたことでしょう。
ですがこの記事を読んでくださっているあなたには、
「安全ベルトはあくまでも補助的なものに過ぎないということ」
そして「正しい抱っこ(コアラ抱っこ)が出来る抱っこ紐を選んで
責任をもって実践すること」が最も大切だ
ということを声を大にして伝えたいと思います。
赤ちゃんが一番頼っているのは
安全ベルトではなくあなた自身なんですから。
※SG基準を制定した方々や適合のために努力された
メーカーの方々を批判するつもりはありません。
消費者の方々に安全に使う意識を持つ重要性を伝えたく
執筆いたしました。ご了承ください。
投稿者プロフィール
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こまりと申します。育児業界で働いていた子育て中のママです。育児の現場で多くのママさんたちと接してきたなかで、育児においていちばん重要なアイテムは抱っこひもであると確信しました。「抱っこ紐を制するものが育児を制す!」抱っこ紐でお悩みのママさんたちのお役に立つべく、ぶちゃけ気味にブログを綴っております。
当ブログとプロフィールの詳細はコチラ







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